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世界が注目! 現代アートを支援するカルティエ現代美術財団

世界中の女性たちの憧れの的、カルティエ。
パリの老舗宝飾店としてあまりにも有名なこのブランドは、世界の現代アートを積極的に支援してきました。
この一般にはあまり知られていないカルティエの芸術支援活動を、現在東京で開催中のコレクション展とあわせてご紹介しましょう。

Vol.1 「カルティエ現代美術財団」の基礎知識 Q&A
Vol.2 カルティエのワンダー・ワールドを体験する1
Vol.3 カルティエ現代美術財団が注目する日本人アーティスト
Vol.4 カルティエのワンダー・ワールドを体験する 2

Posted on 2006/05/17 2006年05月 | 固定リンク |トラックバック (2)|このページの先頭へ

Vol.1 「カルティエ現代美術財団」の基礎知識 Q&A

まずは、展覧会に行く前のウォーミング・アップ。
現代美術の世界では欠かせない存在「カルティエ現代美術財団」について、Q&Aでお答えします。

Q,「カルティエ現代美術財団」って何ですか?

A,1984年、カルティエが現代美術のメセナ(企業による芸術支援活動)のために設立した財団のことです。
1994年にはパリのモンパルナスに移転。ディレクター、エルベ・シャンデスの指揮の下に開催される企画展を通して、現代美術の普及や若手アーティストの発掘をしてきました。

カルティエ独自の視点で行われる斬新な展覧会と、そこでフィーチャーされるアーティストは、世界の美術界の注目の的。作家にとってもここで展覧会を行ったことは、とても大きなキャリアとなります。

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パリのモンパルナスにあるカルティエ現代美術財団は、高名な建築家ジャン・ヌーヴェルの設計
The Fondation Cartier pour l'art contemporain building, Paris Architect: Jean Nouvel
(c) Adgap, Paris, 2004 / Jean Nouvel Photo Patrick Gries

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カルティエ現代美術財団の開放感あふれる展示空間。
リチャード・アーシュワーガー 《クエスチョン・マーク/3つのピリオド》1994年 
(c)Photo Andre Morin

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人気デザイナー、マーク・ニューソンの展覧会のために、カルティエが作品を依頼すると…。なんと出来上がったのは飛行機でした。 マーク・ニューソン《ケルヴィン40》 2003年 (c)Mark Newson Ltd.Photo Daniel Adric

Q,カルティエのコレクションは、どんな作品があるのですか?

A,絵画はもちろん、彫刻、写真、映像、デザイン、大型インスタレーションなど、巨匠から若手アーティストまで約300名、1000点以上のコレクションを有しています。それらの多くが、「注文制作」されたものであることも特徴のひとつ。
アーティストを世界に紹介するだけなく、作家から作品を購入することで、経済的な支援も行っているのです。

Q,カルティエ現代美術財団は日本のアーティストをよく紹介してますね?

A,財団の設立当初から、世界でどの機関も扱ったことのない日本人アーティストの紹介と普及に、とても力を入れています。
例えば、1998年に大成功をおさめた三宅一生展や、2002年の村上隆の個展。荒木経惟や森山大道、川内倫子などの写真作品をいち早くヨーロッパに紹介したのもカルティエです。
ちょうど今、パリの財団では、横尾忠則の大規模な展覧会を開催中です(2006年5月28日まで、http://www.fondation.cartier.fr/flash.html

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パリで大成功をおさめた「三宅一生展」は日本にも巡回。大きな話題を呼びました。
Issey Miyake Making Things exhibition, 1998 (c) Issey Miyake Inc. Photo Yasuaki Yoshinaga

Q,今、東京都現代美術館で開催中のコレクション展はどんな展覧会ですか?

A,カルティエのコレクションの核となる32作家の作品を、約60点で紹介する、世界初の大規模な展覧会です。

驚きの巨大インスタレーションや、ファンタジーあふれる作品など、きっと日本の展覧会では見たことのない作品が数多くあるはず。映像作品は長時間におよぶものもあるので、時間はゆったりとって訪れてください。大人から親子向け、学校の先生向けなど、展覧会を楽しむためのプログラムも充実。こちらに参加するのもオススメです。

Posted on 2006/05/17 2006年05月 | 固定リンク |トラックバック (1)|このページの先頭へ

Vol.2 カルティエのワンダー・ワールドを体験する1

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展覧会のキュレーションを行った、財団のエレーヌ・ケルマシュテルさん

現在、東京都現代美術館で開催中の「カルティエ現代美術財団コレクション展」。
その展覧会は、まさにカルティエによるアートのワンダー・ワールドです。

驚異の世界  

「これもアートなんだ!」
《アート》にまつわる難しくてまじめなイメージを吹き飛ばす、
大型インスタレーションが続々登場!

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ロン・ミュエク《イン・ベッド》 2005年

展覧会のチラシでも紹介されているロン・ミュエクの《イン・ベッド》。
実は、横に人が立つと、こんなに大きなインスタレーションであることがわかります。

女性の血管やシワ、髪、肌の色の表現が恐ろしいほどリアルな作品。オーストラリアの作家、ロン・ミュエクは、もとは子供向けテレビ番組の人形作家だったそうです。

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トニー・アウスラー 《ミラー・メイズ(死んだ目が生きている)》2003年

美術館3階の一部屋を使って発表されている、トニー・アウスラーの作品は、グラス・ファイバーでつくられたいくつもの大きな球体に人間の目が映り、そこに、アマゾンの森林に住むヤノマミ・インディアンの若者が描いた絵が投影されたもの。

暗い部屋の中で、大きな目がギョロギョロと動く様子はとてもシュールな風景です。

ファンタジーの世界

カルティエのコレクションには、こんなにキュートでファンタジックな作品も。

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ライザ・ルー《裏庭》 1995‐1999年

花の咲き乱れる裏庭。テーブルの上においしそうな食事も置かれたライザ・ルーのインスタレーションは……。

花びらも、テーブルクロスも、お鍋も芝生も、全て色とりどりのビーズでできています。この気の遠くなるような美しい作品を、作家のライザ・ルーは、ボランティアとともに3年もの月日をかけて作り上げました。

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映像作品も多数

アニメーションやスライドショーなど、展覧会では数多くの映像作品も出品されています!

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レイモン・ドゥパルドン 映像作品の展示風景

フランスの著名な写真家で映像作家でもある、レイモン・ドゥパルドンの映像作品は、美術館の壁面に巨大なスクリーンを並べて紹介。

上海、モスクワ、東京、アジス・アベバ、ベルリン、カイロ、リオデジャネイロで撮影した映像作品を一挙同時に見せています。自分とは別の場所で生きる見知らぬ人々の、確かな日々の営みを感じることができる作品です。

アート・コラム 1
「インスタレーション」って何?

現代美術の世界でよく使われる言葉に「インスタレーション」があります。これは作品をそれが置かれた場所や空間ごと、観客に感じてもらうという手法。
壁にかけられた絵を1点1点鑑賞するような見方ではなく、作品が展示された空間自体に入り込み、その空気を「体感する」という気持ちで作品をお楽しみください。

次回は、「カルティエ現代美術財団が注目する日本人アーティスト」をご紹介します。

Posted on 2006/05/18 2006年05月 | 固定リンク |トラックバック (1)|このページの先頭へ

Vol.3 カルティエ現代美術財団が注目する日本人アーティスト

設立以来、日本の現代アートをヨーロッパ各国に紹介してきたカルティエ現代美術財団。彼らが注目する日本人アーティストには、まだ21歳の新人も!

カルティエに出会って人生が変わりました……松井えり菜

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森山大道《ポラロイド、ポラロイド》1997年 3日間で撮影された3262点のポラロイド写真で自らのアトリエを再現

現在、東京都現代美術館で、開催されている「カルティエ現代美術財団コレクション展」。紹介されている32作家の中には、森山大道、川内倫子、松井えり菜の3人の日本人作家が含まれています。

森山大道は戦後の日本の写真を大きく変えた写真界の大御所、川内倫子もまだ30代ながら透明感あふれる写真作品で日本でも人気の高い写真家です。

しかし、松井えり菜って誰? と思う人は多いでしょう。それもそのはず、彼女は日本でも、ほとんど知られていないアーティスト。現在、多摩美術大学に通っている、21歳の美大生です。

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松井えり菜《えびちり大好き!》2003年
作品の下に置いてある食品サンプルは、えびちりを知らないフランス人がわかるように、松井さんが日本で買っていったもの

彼女の作品《えびちり大好き!》は、大好きなえびちりの前で白目をむく自画像。頭のまわりに天使の輪のごとく「まついえりなです。……えびちりだいすき!」と書いてある、一度見たら忘れられない作品です。

2004年、村上隆のカイカイキキが主催するアートの祭典『GEISEI#6』で見事金賞を受賞した彼女は、この時、審査員をつとめていたカルティエ現代美術財団の館長、エルベ・シャンデスに見出され、2005年にカルティエが世界中の若いアーティストを集めて行った企画展「私はそれを夢みる」に参加。

この時、財団によって購入された《えびちり大好き》と《宇宙☆ユニヴァース》(2004年)は、子ども時代から抜け切れていない独特の世界観や、「儚さと強さをあわせもつ」部分が評価されました。

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松井えり菜さん 「自画像は写真を見ながら描きました」

そんな彼女に「カルティエでのグループ展は、松井さんのアーティストとしての人生を変えましたか?」と質問すると

「今、世界中の有名アーティストと一緒にここにいること自体が奇跡です」。

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会場では、《えびちり大好き!》と《宇宙☆ユニヴァース》が並んで展示されています。

このチャンスをどう生かしていくのか? これからの成長が気になる作家さんです。

アート・コラム2
世界で注目されている? 日本の現代美術

漫画やゲーム、アニメーションなど、その独自性が海外から広く認められるようになっている日本のサブ・カルチャー。最近では「ジャパンクール(かっこいい日本)」という言葉が示すように世界各国から高く評価されています。
カルティエ現代美術財団も、この新しい文化の波に敏感。2002年、村上隆の個展と並んで日本人アーティスト約20名による展覧会を開催し、彼らの制作を通して、日本の漫画や音楽、ファッション、アニメなどをヨーロッパにいち早く紹介しました。

Posted on 2006/05/25 2006年05月 | 固定リンク |トラックバック (0)|このページの先頭へ

Vol.4 カルティエのワンダー・ワールドを体験する 2

見ておきたいカルティエ現代美術財団のコレクションはまだまだあります。Vol.2の体験記に引き続いて、展覧会レポート第2弾です。

人気デザイナー、マーク・ニューソン登場!!

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カルティエの重要なコレクション 《ケルヴィン40》(2003年)とともに

数年前、日本の携帯電話機のデザインをしたことでも話題を呼んだマーク・ニューソンは、今、世界で最も注目されるデザイナー。日本で4年間生活したこともあり、東京を隅々まで知る親日家です。

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「この飛行機、飛べるかもしれないよ」

出品中の《ケルヴィン40》は、カルティエの注文制作で彼がデザインしたコンセプト・ジェット機。

「飛行機の広告の仕事をずいぶんやっていたから、いつか自分でジェット機を作りたいと思っていたんだ。これは模型だけれど、ちゃんと乗ることもできるんだよ」

ガイコツ、ガイコツ

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《パパたち》1995年

「彫刻作品を作っているけれど、実はデッサンが得意」というアラン・セシャス。彼の多くの作品は、教師や父親や教授など権威や権力を風刺したもの。

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《大きな頭》(1986年)とアラン・セシャス

そういえば、頭ばかり大きな人間の彫刻《大きな頭》や、ガイコツの子どもたちが自分のパパを描く《パパたち》なども、頭でっかちなエリートや、表向きは立派な父親を風刺しているようです。

「ヤノマミ・インディアン」とともに暮らした写真家

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クラウディア・アンデュジャール  《アイデンティティー、ワカタ》1976年

ブラジル在住の写真家、クラウディア・アンデュジャールは、70年代初頭からアマゾンの奥地に住む原住民「ヤノマミ・インディアン」と暮らし、彼らに作品をささげてきた作家。

「私はヤノマミの人々の魂の中に入りこもうとしたんです。彼らと彼ら以外の人々との共通点を理解することが重要でした」

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クラウディア・アンデュジャール 

2003年、カルティエ現代美術財団は、ヤノマミをテーマにした大規模なグループ展を行いましたが、この展覧会は彼女なしでは実現しなかったそう。展覧会では、その時に制作された何人かの作家作品を見ることもできます。

アート・コラム 3
カルティエの他にアートのメセナ活動を行っている企業はありますか?

昔のアーティストの支援者といえば、王侯貴族や教会。しかし、現在の文化の強力な支援者といえば企業です。
「社会貢献」のために芸術支援を行っている企業は世界中で大小様々ですが、有名なものはメルセデス・ベンツやフィリップ・モリス。ドイツ銀行なども現代作家を支援しながら質の高いコレクションを有する企業です。
日本では、ギャラリーを持って文化活動を行っている資生堂やキリンビール、アート・フェスティバルが知られるアサヒビール、直島での活動がユニークなベネッセコーポレーション、美術の助成金制度があるポーラ化粧本舗などが知られています。

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カルティエ現代美術財団コレクション展

会場:東京都現代美術館
会期:2006年4月22日(土)~7月2日(日) (毎週月曜日休館)
http://www.mot-art-museum.jp/

取材・文/木谷節子(アートライター)
1998年、2度目の大学、東京藝術大学芸術学科卒業。現在、「ぴあ」「M’ens JOKER」「GOETHE」などで、アート情報を執筆。展覧会音声ガイドなどの執筆も多数。

Posted on 2006/06/01 2006年05月 | 固定リンク |トラックバック (0)|このページの先頭へ

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